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    「相続放棄したら終わり、ではなかった」空き家問題

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    祖父母や親が残した建物が、だれも住まずに「空き家」状態になっているケースは少なくありません。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」にも、肉親の空き家問題に頭を痛める女性からの投稿がありました。空き家を放置していると、近隣の迷惑になることもあります。どうしたら解決できるのでしょうか。専門家に聞いてみました。

    雪国の市役所から手紙が届いた

    画像はイメージです
    相続放棄したら終わり、ではなかった」というタイトルで投稿したのは、トピ主の「その」さん。中学生のころに両親が離婚し、以来、30年も会うことのなかった父親が4年前に亡くなりました。父親が住んでいた家が借地に建っていることは知っており、父の残した借金の取り立てから逃れるために、親族と相談のうえ、全員で相続放棄をしたそうです。

    ところが、昨冬、空き家にしていた亡父の家について、市役所から「屋根の雪下ろしがされないので、隣家の窓ガラスが割れてしまった」という内容の手紙が来ました。問い合わせたところ、相続放棄をしても、相続財産管理人が決まるまでは、子供であるトピ主さんが空き家を管理する義務があるという説明だったそう。

    これ以上、近所に迷惑はかけたくない

    仕方なく、トピ主さんが隣家に窓ガラスの修理代を払い、相続財産管理人を決める方法などを市役所に教えてもらうことになりました。

    これ以上、近隣に迷惑をかけないためには、家を取り壊すしかないと考えたトピ主さん。調べてみたところ、すでに相続放棄をした後だったので、弁護士や司法書士などに相続財産管理人になってもらうよう依頼をする必要があり、その場合には、報酬100万円のほか、戸籍の収集代行手数料や家の解体費用などに200万円余りがかかることがわかってきました。

    「死んだ後も私を苦しめる父には、はらわたが煮えくり返ります」「払えない額ではありません。夫は理解してくれていますが、勤続30年、コツコツためたお金をこんな形で使わなければならないことは、悔しくてたまりません」とトピ主さんはつづっています。

    地代も安いのに300万円も費用がかかる

    この投稿には、土地の所有者の立場からのレスもありました。土地を貸した「たこ」さんは、トピ主さんのケースとは反対に、相続放棄された居住者名義の建物を取り壊すために、弁護士費用や解体費用など300万円を準備中。

    「トピ主さんの気持ちはわかりますが、相続放棄は家族内の問題。『相続放棄したからって、地主が支払うってどーなの? あんまりじゃない!』って気持ちです。地代なんて固定資産税にちょっとプラスしたくらい。弁護士さんに『地主なんて、もうからない商売だねー』って言われました」と書き込みました。

    相続から数年して深刻化

    ある日突然、巻き込まれてしまう恐れがある空き家問題。どのように考えて対処すればいいのでしょうか。

    東京都の「空き家利活用等普及啓発・相談事業」を手掛ける「ネクスト・アイズ」の社長で、不動産コンサルタントの小野信一さんに話を聞きました。

    トピ主さんのケースについて、小野さんは「建物の解体費用だけでも、木造なら3.3平方メートルあたり5万円以上はかかるといわれていますので、多額の負担は仕方ないでしょうね。一般的に、借地権を滅却する場合、借地人の家族だけで費用を負担するのではなく、借地権の価値算定を行い、地主(底地権者)への買い取り請求などの交渉を行うことはできますが、この方のように、相続を放棄した後だと、そうした交渉も難しく、余計に大変だった可能性はあります」と指摘します。

    空き家問題は相続から数年後に深刻化するケースも多く、正解がなかなか出せないともいいます。自治体と共同で行っている空き家問題のセミナーで、小野さんは「まずは所有する空き家や、将来空き家となる可能性がある不動産の現状を正しく確認すること」を呼び掛けています。建物の状態や残置物、接道(土地が接している道路)の幅、建ぺい率、容積率などを把握しておくことを勧めています。

    トピ主さんの亡父の家では、屋根に積もった雪が落下して、隣家の窓ガラスが割れるという事故が発生しました。「人の住んでいない空き家には、リスクがいっぱいあります。老朽化して窓ガラスやブロック塀が倒れ、他人がけがをすることがあれば、空き家の所有者の責任として損害賠償を問われることになりかねません。治安上の不安、住環境の劣化などで地域問題へ発展する恐れもあります。なるべく空き家にしない対策が求められています」と小野さんは話します。

    維持管理か利活用か売却か

    >セミナーで配布している「空き家解決マニュアル」では、大きな方向性として、

    <1>空き家のまま維持管理する

    <2>親類に住んでもらったり貸家として活用したりする

    <3>売却する

    ――のいずれかを選択することを勧めています。自分で家を維持管理できない場合は、警備保障会社の定額サービスを利用することなども可能です。

    「高齢者の間で、子や孫たちに迷惑をかけないで生前整理する終活がブームになっていますが、空き家にすることで、どれだけの費用負担がかかっていくのか、家族が冷静に話し合っておく必要もあります。決定権は、不動産の権利者である被相続人(亡くなった人)のほうにあるので、いろいろなケースを見ながら、現状のまま売却するか、それとも建物を解体して更地にして売却するかなども、専門家を交えながら話し合うといいと思います」と小野さんは強調します。

    どんな選択をするにしろ、財産の引き継ぎ方について、家族内で話し合いだけはしっかりしておくのがよさそうです。

    (読売新聞メディア局 永原香代子)

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