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    【トピ探訪】交際経験ゼロの芸人・吉住、恋心を封印して生まれたネタとは

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    お笑い芸人 吉住

    今回気になったのは、旦那さんのことが好きすぎて困っている50代の女性からのトピ「夫のことが好き過ぎて」。

    パートナーがあまりにもできた人で、そんな彼と出会えたのは奇跡としか思えないというトピ主さん。だからこそ、死別した時や、パートナーがこれから病気などで痛い思いやつらい思いをするのでは……と想像するだけで心が痛む。どうしたらいいかという相談内容でした。このトピに付いている返信には共感のコメントがたくさんあり、私はなんだかうれしくなってしまいました。

    なぜなら、こんな話は都市伝説だと思っていたから。テレビで「ラブラブなんです」とおしどり夫婦として出ていたタレントさんが、次の日には離婚を発表したりするし、ましてや自分の周りで、結婚20年を超えてもお互い好きすぎる夫婦なんて、見たことも聞いたこともなかったからです。運命の相手なんていうのは、もう物語の中の出来事なんだと思ってました。

    31歳で恋愛と向き合おうと覚悟

    吉住さん
    実は、私は31歳の今まで交際経験がなく、だいぶ遅すぎるかもしれませんが、やっと人生を生きていく上で、恋愛というものから逃げずに向き合わなくてはと覚悟したところで。

    というのも、去年、女芸人の日本一を決める大会で優勝するまでは、売れない下積み時代というのを過ごしていました。お金がないからバイトしなきゃいけない、となると時間もない、でも売れるためにはネタを書かなきゃいけない……と、目の前のことを必死にやり過ごす日々で、恋愛に割ける心の余裕なんてものはありませんでした。ずっと恋愛というものが周辺視野に入ってはいるんだけど、気づかないフリをしてきました。

    そんななか、大会で優勝できてホッとため息をついた時、急に視界が開けて、私の歩く道の先に、恋愛や結婚の文字が「もう逃さないぞ」と言わんばかりに現れたのです。これはもうさすがに、言い訳できないと腹をくくったところなんです。

    別に、「絶対に結婚しなければ!」なんて思ってるわけじゃないんです。私の周りには、結婚を選択せずにひとりで生きていくと決め、自分の人生を豊かにしている方がたくさんいらっしゃるので、そういう生き方にも憧れています。

    ただ、今の私は選んだわけではなくただひとりなんです。だから、自分でその生き方を選択したと思える最低限度の経験値くらいは持っておきたい。最終的には、選択せざるを得なかったでもいい。経験値がゼロのままで人生を終えることだけは、避けたいと思うようになりました。

    眠る時も彼を思う、幸せな日々


    そもそも、そんなに人を好きになるタイプではないので、当たって砕けたことすらないんです。けれど、そんな私にも2年ほど前に少し気になる人がいました。その人は、友人が連れてきた友人の会社の人でした。

    こんなことを言うと「だから恋愛できないんだよ」と言われるのですが、私は初対面の相手の身元を気にします。昔、アンミカさんの元彼がスパイだったという話をテレビで見て以来、初対面の相手がスパイかどうか気にするようになってしまいました。けれど、その時は友人が連れてきたということで疑いの目を向けることなく、スムーズに会話に入ることができました。

    そして、会話も弾み、彼が空の缶詰を洗って捨てるというところにどうしようもなく惹(ひ)かれました。洗い方をジェスチャー付きで熱弁してくれるんです。すてきな人だと思いました。 家に帰ってからも缶詰の彼のことが頭から離れなくて、これは恋だと確信しました。

    好きな人がいる。それだけでなんだか楽しくて。「空ってこんなに青かったっけ?」なんて思ったりなんかして(本当に思うんですね)。

    その数日は、夢のような日々でした。目が覚めている間は彼のことを考えて,眠りにつく時はどうか彼が夢に出てきてくれますようにと願いながらまぶたを閉じる。幸せでした。

    怖くなって、気になる人を忘れることにした

    写真はイメージ
    けれど、それから数日経ってライブを1週間後に控えたある日、ネタを書こうとした私はがく然としました。心がウキウキしていて、何にもネタが思い浮かばないんです。基本的に私は、段ボールの彼氏をつくる女子高生や放課後高校生のフリをして男子高校生と野球をする30歳の女、当たり屋で生計を立てているお母さんといったネタを得意としており、あまり楽しい気持ちで考えるものではありません。

    だから、急に筆が進まなくなって。感覚としては、「魔女の宅急便」でいうところの主人公・キキが、急に魔法が使えなくなり、空を飛べなくなった感じでしょうか。私は怖くなって、彼のことを忘れることにしました。恋愛と仕事をてんびんにかけ、仕事を取ることにしたんです。

    そして出来上がったのが、我が子をものまねタレントにするため、スパルタ教育をするお母さんというネタでした。正直自分でも意味が分かりません。 でも、その時に自分は何かを両立できるタイプではないと悟り、とりあえず芸人としての道を選びました。

    「結婚なんてするもんじゃねーな!」と思っていたけれど

    その後、恋愛に唯一触れる機会といえば、インスタグラムに投稿されている実体験をつづったマンガを読むことで、作者の恋愛や新婚生活をのぞき見するような感覚で、片っぱしから読みあさりました。結構赤裸々に描かれていて、面白いんですよ。自分に恋愛は当分無理だから、キュンキュンをマンガで補うことにしたんですね。

    すると、ほどなくして、インスタのおすすめ欄には、なぜか「サレヅマ」のマンガがあふれるようになりました。「サレヅマ」とは不倫をされた妻のことで、夫の浮気について、事細かに描かれています。幸せな結婚生活から生まれたちょっとした違和感、不倫発覚、証拠集め、義実家との不和などが、それはそれは臨場感たっぷりに展開されていくんです。そんなマンガが、ごまんとあふれかえっている。 恋愛から逃げてきた私をまた逃げ腰にするには、十分な材料でした。

    探偵と弁護士の両方を雇うにはお金がかかりすぎるから、不倫の証拠はなるべく自分でつかまなければいけない。けれど、バレたら隠ぺい工作されるので、慰謝料を多くもらうためにも隠密に、裁判で使える証拠はどうやって集めたらいいのか……そんな知識で、私の頭はパンパンになっていました。そして、気づいた時には結婚というものに希望が持てなくなっていました。

    今年の11月で、32歳。交際経験ゼロの女が、インスタグラムのマンガで何もかも知った気になって「結婚なんてするもんじゃねーな!」なんて、ベッドの上でゴロゴロ寝転がりながら絶望を感じていたんです。

    けれど、そんな私に差した一筋の光。それが、このトピでした。恋愛に一歩踏み出してみたいと思えるトピでした。ありがとうございます。

    私にも運命の相手が、現れるでしょうか。

    それでは、今からファンの男の人からDMが届いてないかインスタグラムをのぞいてきますね。


    吉住(よしずみ)
    1989年11月12日生まれ。福岡県北九州市出身。プロダクション人力舎所属。「女芸人No.1決定戦 THE W(ザ・ダブリュー)2020(日本テレビ系)」で4代目チャンピオンに輝く。ベストネタ集DVD『せっかくだもの。』を発売中。