大学は文学部でラテンアメリカ文化を学びました。スペイン語も4年勉強し、ガルシア・マルケス「百年の孤独」を原語で読む授業もあったはずです。しかし、私が唯一覚えているスペイン語の文章は、語学の教科書にあった「ホセは一晩中働いています」のみ。
恥ずかしながら、大学時代の私はまるで勉強をしませんでした。本当にもったいなかった。学費を払ってくれた親にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。大人になってからは無教養ゆえに恥を掻く場面も多く、社会人入学で通い直したいとさえ思っています。
小町にも「50代後半から大学へ通った方、教えてください。」というトピが立っていました。トピ主さんは四捨五入すると60歳。大学へ進学できなかったことへの悔いが残っており、いまからでも入学したい気持ちがある。しかし学びたい分野は特になく、後悔をなくしたいという動機だけで卒業までたどり着けるか不安なようでした。
私はまったく問題ないと思います。入学後に学びたい分野が出てくるかもしれないし、「こんなものか」と憑き物が落ち途中で辞めてしまうかもしれない。それでもいいではないですか。
還暦近くまで真面目に生きてきた人が「過去の後悔をなくす」ことを優先してなにが悪いと思います。レスにも励ましや具体的なアドバイスが多く、読んでいて目頭が熱くなりました。
専門的なことはなにも学ばなかった私ですが、経済学の授業で教授が言った「親友とは、深夜2時に電話をしても『どうしたの?』とあなたのことを心配してくれる相手のことだ」という言葉がしっかり胸に刻まれています。これを知れただけでも、私にとっては大学に行った価値があると思うのです。(コラムニスト)
ジェーン・スー
作詞家、コラムニスト。1973年、東京都生まれの日本人。「未婚のプロ」を名乗り、「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」(幻冬舎)などの著書が話題に。