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    記念座談会

    【悩める小町たちへ】〈下〉私がおかしい?スタンダードがない時代のニーズ

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     ――発言小町の魅力をどのようにとらえていますか。

     山田 匿名性が高いということです。身近な人にも相談しにくく、意見を聞きにくい社会になったのだと思います。日本性教育協会の調査では、この20~30年間で中高生の恋愛経験が減っています。そして、それにも増して、友だち同士で性や恋人の話をする割合も減っています。友だちに相談をすると、それがすぐに拡散しかねないというリスクを抱えています。そうするともう、ネット掲示板に相談を書き込むしかありません。

     犬山 若者にとっては、SNSのやりとりなどをスクリーンショットで保存して、ネット上で共有してしまうのは当たり前ですからね。

     山田 そうですね。そういう話を友だちや知り合いの中ではだんだんしづらくなっているという指摘ですね。

     ――友だちが安心して話せる相手ではなくなってしまった。

     山田 拡散するリスクが伴うということです。友だちは、夫婦や家族のように固定しているわけではありません。だから、ちょっと嫌なことがあれば、ばらしちゃうということもあります。

     犬山 この前、私も10代の女の子たちの相談に乗ったんです。匿名のツイッターアカウントで、匿名のまま何でも質問できる「質問箱」というのがあるそうです。質問という体裁で、実際には「ここが嫌い」「あいつキモい」などと書かれてしまいます。それをやったことがあるという子が10人に1人という割合でいて、そうなると、友だち同士でも疑心暗鬼になってしまうわけです。「自分がやっているから、もしかしたらあの子もやっているかも」と。友だちなのに本音が言えないという状況につながってしまいます。人間関係が行き詰まったときに、ネット掲示板という逃げ場があるのはいいことだと思います。

     ――行き詰まる原因の一つになっているのがインターネットというのも複雑な気持ちにはなります。

     犬山 ルール作りが急がれますね。

     山田 過渡期なんですね。私はSNSをやっていないので、学生からは不便に思われています。

     杉上 コミュニケーションがどんどん変化する中で、発言小町が20年間生き残っているというのはすごいことですね。

    「家族」は子どもと実家

     ――「妻の使い込み」という衝撃的なタイトルのトピもありました。お金のかかるスポーツを子どもにやらせていて、妻に任せていたら……という話です。貯金の500万円、亡父の遺産の800万円を、妻がすべて使ってしまったと。

     山田 ただこれ、妻は自分のために使っているというわけではないんです。妻にとって、家族というのは「子ども」と「実家」。夫ではないんです。夫のためにお金を使おうとか、遺そうという気持ちにはならないのでしょう。

     犬山 せめて、妻から相談があればいいのに。

     杉上 そうですね。

     山田 相談すると、反対されると分かっているから、こっそりやるんです。

     犬山 そう考えると、専業主婦の悩みに、夫から「俺の稼いできた金で食わせてやっているのに」と言われるというパターンが多くありますね。そこは、夫婦2人で稼ぐという認識にはなってほしいなと思います。

     杉上 それってモラハラですよね。

     犬山 発言小町を見ていると、そういう専業主婦の悩みが少なくありません。つらいと思います。

     山田 欧米は夫婦単位なのですが、日本は「家族」が拡張しがちです。育ててくれた親のおかげ。自分の親にお金を渡すというのは、育ててもらったから当たり前というのがあります。妻からすれば、なぜ私や子どもじゃないの、となってしまいます。自分の配偶者の親は家族ではないという考え方なんでしょうね。

     ――夫婦関係以上に、血のつながった親子関係が結婚後もかなり色濃く残るというのが日本の特徴なのでしょうか。

     山田 東アジア共通の傾向です。ヨーロッパやアメリカがむしろ特殊なのかもしれません。中国は、親や親戚が困っていたら助け合うのが当たり前です。配偶者の親が困っていたら、自分を差し置いてでも助けるというのは当然なんです。日本では、夫婦単位なのか、親子単位なのかというせめぎ合いがあります。親が裕福だったら、口を出されるものの、金も出してもらえるという状況があります。それでも、「家族じゃないんだから口は出してほしくない」という気持ちもあるでしょう。家族とお金のルールがあいまいなまま、格差ばかりが広がっている現実があります。夫婦は一体だけれど、一方で個人化も進んでいます。日本は共働き社会と専業主婦社会が両方混じっているので、難しいですね。

     ――「発言小町」が今後どのように使われるといいと思いますか。

    大手小町編集長の小坂佳子
     杉上 会社員として19年目になり、若い世代の教育や研修を担当する機会が多くなってきました。私の新人時代は、ペットボトルを前に置かれて、「声で倒せ!」というのが当たり前でした。先輩からやれと言われたらやる、という感覚で育った世代です。今そんなことをすれば、パワハラだのモラハラだのと言われかねません。とはいえ、若い子の生態や本音を知る場が意外にない。そう感じているときに、発言小町で同じような悩みを見つけることがあります。「うちの新人が……」とか「定時に帰ってしまう」とか。今はそういう時代なんだと考えながら、自分と違う世代の本音を知るために使っています。

     犬山 フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどは、どういう人がどのアカウントで、どのアカウントにヒモづいて情報発信しているかが分かりますよね。これに対して、発言小町は匿名性が非常に高い。にもかかわらず、安心、安全に悩みを打ち明けることができます。そうなると、ほかのSNSでは書けないことをここで書くことになります。ほかの掲示板だったら、汚い言葉、罵倒する言葉まで載ってしまうリスクがあります。発言小町でも、厳しい言葉が飛び交うこともあるけれど、そうしたレスに対しても、「それはひどいんじゃないですか」という反応が寄せられます。発言小町には、SNSにはない魅力がギュッと詰まっています。ママ友のことや義実家のことで悩んだときに、安全な逃げ場になってくれます。私も人に言えないような悩みは、ここに……、あ、毒まみれだから、すぐばれちゃうかも(笑)。

     山田 小さくて狭いSNSの社会が広がったがゆえ、ちょっとした公の場で、いろんな意見が飛び交う機会が必要とされるのだと思います。トピ主もレスする人も、新聞社のサイトだという信頼感があり、極端にひどい内容は書かれないと思い、常識人が集まっているのだと思います。何がスタンダードか分からない時代になっていて、自分の生き方や考え方が、普遍的なのか、やや変なのか、というのを確認したい衝動にかられます。それも、大所高所からというより、普通の人がどう思うのかをみんな知りたいのです。そうしたニーズはますます広がっていくと思います。


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