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    【悩める小町たちへ】〈上〉婚活市場に振り回される「個人の価値」

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     読売新聞の女性向けインターネット掲示板「発言小町」が10月、開設20周年を迎えました。悩みを打ち明けるトピックに対し、次々と意見やアドバイスが書き込まれ、活発な意見交換の場として人気を得てきました。恋愛、結婚、育児、夫婦、仕事など幅広いテーマで女性の本音があふれています。夕刊コラム「小町拝見」を執筆しているエッセイストの犬山紙子さんと日本テレビアナウンサーの杉上佐智枝さん、中央大学教授の山田昌弘さんの3人に、「発言小町」の魅力について話し合ってもらいました。(司会 大手小町編集長・小坂佳子)

    タブレットで発言小町のトピを読む(左から)杉上さん、犬山さん、山田さん

     ――どのように「発言小町」を読んでいますか。

     杉上 通勤時間にスマホで見ることが多いです。「小町拝見」を書くときに、なるべく幅広いテーマにしようと、子育て、婚活、仕事などいろいろなジャンルに目を通すようにしています。ただ、共感しやすいのは、やはり子育ての話題です。わかるなーと思ったり、これはちょっとどうなんだろうと考えたりしながら、つい読みふけっています。投稿者と同じような気持ちのことも多く、何度私がトピ主になろうかと思ったことか。

     犬山 発言小町の20年は、インターネットの「掲示板サイト」の歴史そのものと言っていいほどだと感じています。ツイッターなどのSNSで、「こんなトピがある」「おもしろいトピがある」と知り、発言小町にたどり着くことが多かったと思います。だれにも言えない悩みを打ち明けられる場になっています。卵巣の病気になったとき、「どうやって乗り越えたのか」「手術はどんな感じなのか」といった同じような悩みを抱える人を見つける場として活用しました。自分が子育て中なので、最近は結婚や子育ての話題に目が行きます。卵のむき方などの生活に役立つ裏ワザのようなトピも楽しく読んでいます。
    杉上佐智枝さん

    山田 社会学者として、家族や若者、結婚や親子関係を研究しているので、大変興味深く読んでいます。研究活動としてインタビュー調査を行うことがありますが、なかなか本音にたどり着くのは難しい。発言小町は、トピ主さんからも、それに対して回答する人からも次から次へと本音が出てきます。世代や性別による考え方の違いを知る上で、どんな調査よりも研究に役立ちます。読売新聞朝刊「人生案内」の回答者もやっているので、相談内容と似たようなトピに対する一般の方たちの反応は参考になります。

    婚活市場で求められる「スペック」

     ――発言小町で盛り上がるテーマの一つに「恋愛・結婚」があります。「40歳過ぎてからの婚活について」というトピがあります。

     杉上 私も40歳を過ぎて、女性としてどうありたいかということを考えます。同い年の親友で、結婚して専業主婦になりたいという願望とは裏腹に、すごく仕事ができて部長クラスに出世した女性がいます。彼女は理想の相手について、「自分より収入の多い人がいい」「自分より年上がいい」などと言っていたのですが、自分が年齢を重ね、出世してしまったので、どんどん難しい状況になってしまっています。幸せな婚活をするためには条件を絞るしかないと思います。自分が理想としていたモノをそぎ落としていく作業をすると、一番大事なモノが見えてくるのかなと。
    山田昌弘さん

     ――婚活の話題は「スペック」というキーワードが目立ちます。「どういうスペックの相手が釣り合うんでしょうか」といった内容の投稿もあります。

     山田 自然な出会いがあればいいのですが、そういう機会が枯渇してしまっているので、「スペック」のほうに目が向けられるようになってしまいます。出会いが「婚活市場」になっている状況がありますので、自分の価値と相手の価値をマッチングさせることが重要になっているようです。「息子と嫁は格が違うんじゃないか」といった発言をする親もいます。もっと気軽に付き合って、ダメなら次へいけばいいとも思うのですが、効率よく、リスクなく結婚したいという風潮がありますね。

     犬山 年齢を重ねることで深まる魅力があるはずなのに、婚活という市場では若さこそがすべて。年齢を重ねることが自信を失わせるシステムになっていると感じています。「スペック」とか「自分に釣り合う」という観点でみていると、ありもしない「女の価値」を計っているだけで「個人の価値」が見落とされています。婚活市場に振り回され、自信を失い、消極的になってしまっている内容のトピもあります。厳しい言葉ばかりではなく、みんなで励まし合うようなレスがあるといいなと思います。

     ――「婚活は若いうちじゃないと厳しいよ」という意見も書いてあります。

     山田 40歳前後だと、女性の4人に1人が未婚です。卑下する必要なんてなくて、結婚しないという生き方だって、もっと尊重されていいと思います。ただ、最近は若いうちから婚活に走る人も多く、ここ5年ぐらいの間で結婚相談所の入会年齢が低年齢化していて、20代前半の女性も増えているそうです。

     ――「26歳女が婚活で相手に求める条件はどの程度が良いですか?」というトピもありました。「若いんだからいいんじゃないの」というレスがついていましたが。
    犬山紙子さん

     杉上 恋愛が面倒くさいということでしょうか。

     山田 そりゃ、面倒くさいでしょうね。

     犬山 婚活はある種のSOSなのかな、と感じます。孤独が怖い、将来貧困に陥るのが怖い、そういった自分の不安を解消させてくれる、ハッピー制度、それが結婚。孤独感が解消されて、貧困にならずに生きていけるというセットが魅力的で、結婚を欲している人が多いのかもしれません。

     ――婚活を巡っては、「何とか結婚できないものでしょうか」というトピがありました。47歳の女性が自身を女優の石田ゆり子さんに重ねて、結婚を目指す一方で、独身生活を楽しんでいる様子もうかがえます。

     山田 社会学的に言うと、昔のように、いわゆる「標準的なライフコース」を生きる人ばかりではなくなりました。そうじゃない人たちが、「これでいいのかな?」っていう不安を抱きやすい状況があります。だから、「それでもいいんじゃないですか」というレスがあると、「ああ、これでいいんだ」と安心できます。それは、とてもいいやりとりだと思います。画一的な日本社会では、多くの人が安定した収入の人と結婚して子供を持って、というのが標準という思いが植え付けられています。でも、現実ではそうじゃない人が増えています。ただ、学者の私が「こうじゃない人が増えているからいいんですよ」と言うよりも、「私も同じです」と言われるほうがいいですよね。


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