――「恋愛・結婚」に続いて、「ママ友」の話題も盛り上がるテーマの一つです。「愚痴 ポツンママさんからのクレーム」というトピがあります。リーダー格の「ボスママ」、いつも集団でいる「群れママ」、一人でいる「ポツンママ」といった独特の言葉も飛び出します。
犬山 やだ、「ボス」とか「群れ」とか、まるでお猿さんの社会みたい(笑)。
山田 「群れ派」と「ポツン派」で意見の対決があるわけですね。
犬山 ちょっと面倒くさそうですね。
――「賞味期限の切れたママ友と別れたい」というトピもありました。
犬山 ちょっと怖い。恋愛よりも辛らつですね。「ママ友」って言っても友だちじゃないんです。会社の同僚のような感じ。
山田 ウマの合わない友達がいるという相談は「人生案内」でもありますが、「賞味期限切れ」なんていう言い方は、さすがにインターネットの表現ですね。「ポツンママ」という言い回しも手紙にしたためる相談にはありません。
犬山 ママ友の人間関係は、言い方は悪いですが、子どもが人質としてとられているので、「この人、嫌だから関係を断ち切っちゃう」というのができません。だから、悩みの種になるんです。ただの友だちなら、多少嫌なことがあっても、それほど悩むこともありません。
杉上 子どもの学校付き合いで、一度、ママ友の中に入ると、それをずっと続けなきゃいけなくなります。
みんなビクビクしている
犬山 みんなどこかビクビクしています。もちろん、とてもいいママもいるんですが、それって運任せみたいな感じです。仕事をしていて、子育てがあって、趣味の場あって、といくつも居場所があれば、特定の人間関係にこだわらないでいられます。
山田 というと、特定の場所しかない専業主婦はつらいかもしれません。
杉上 専業主婦で人間関係がママ友しかないとすれば、それは、もう「沼」ですよ。
発言小町について語る(左から)杉上さん、犬山さん、山田さん
――LINEやインスタグラムなどのSNSでもつながっていますからね。
犬山 SNSのツールは発達したのかもしれませんが、それを使う方のルールが未発達なんですよね。
杉上 子どもの学校では、学年全体のLINEグループがあります。そこに何十人も参加しています。事務連絡も来るのですが、返事の仕方もママによってそれぞれです。みんなが「ありがとうございます」って一言ずつ返して、それが80件以上になるんです。ちょっとうんざり気味になって、もう返事はいいんじゃないかと思っていたら、返事をしない人をちゃんとチェックしているママがいるんです。「〇〇さん、確認できてますか」って。
犬山 「あとは既読スルーでオッケーにしましょう」って最初の人が書いてほしい。
杉上 そう、それこそ「優秀なボスママ」がいるといいんですけどね。そのまま返信しなかったら、だんだん追い詰められているような気分になってしまって、ダメな人だと思われちゃうって。余計な気ばかり回して、かといって、抜け出すこともできません。
やっぱり「義実家」が気になる
――発言小町ではこの20年で、いくつか独特な言葉が使われています。その一つが「義実家」です。日本語としては正しい使用法ではないとされています。
山田 配偶者の両親の家ということですね
犬山 普通に使ってしまっています。自分が結婚する前から発言小町で見ていたと思うので、違和感なく「義実家」と使っていました。
――2004年のトピに、「義実家という言葉を聞きますが、とても違和感があります」と書かれていました。
犬山 発言小町から言葉がどんどん生まれているんですね。
――夫が義実家にお金を渡している「義実家とお金」のトピがありました。
山田 「家族」がどこまでか、という問題があります。きょうだい関係と義理の親子関係は、大変難しいものです。共同体として、自分の幸せと思えるかどうかということです。ところが、配偶者の家族は自分の家族とは思えないという考え方が多いようです。きょうだいでも、結婚して別の家庭を持ったら、自分の生活を削ってまできょうだいのために、とはなりません。高度経済成長期なら、みんな収入が上がっていったから良かったのでしょう。けれど、今は義実家による有利不利が自分や自分の子どもに関わってきます。友だちの義実家は子どもにたくさんお金をくれるのに、なんでうちの義実家には逆にお金をあげなきゃいけないのかって。
犬山 そうか、自分にとっての普通と、配偶者の家にとっての普通が違うっていうことなんですね。
山田 欧米の家族は夫婦が中心なので、大人になったら経済関係は原則切れるんです。ところが、日本はその点があいまいなので、実家の資産状況などで有利不利が出てきてしまいます。それが、実際の婚活問題にまで及んじゃうんです。好きな人の親がどうのこうのという相談は、人生案内でも回答したことがあります。
プロフィル
犬山 紙子( いぬやま・かみこ )
エッセイスト、タレント。1981年、大阪市生まれ。雑誌やテレビなどで活躍中。2017年に長女を出産した。
杉上 佐智枝( すぎうえ・さちえ )
日本テレビアナウンサー。1978年、東京都生まれ。2児の母で、絵本の魅力を伝える「絵本専門士」の資格を持つ。
山田 昌弘( やまだ・まさひろ )
中央大教授(家族社会学)。1957年、東京都生まれ。ジャーナリストの白河桃子さんと「婚活」という言葉を広めた。読売新聞くらし面「人生案内」の回答者。