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    【トピ探訪】欲望や不安のレパートリーは令和も「友人たちに勝ったはずなのに」

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    閲覧ありがとうございます。
    東京生まれインターネット育ちの32歳女です。

    社会人になりたての頃に入り浸っていた「発言小町」で、まさか自分がコラムを執筆することになるとは思っていませんでした。

    忘れもしない自分が投稿した人生初トピは、「弁護士を目指し続けるか悩んでいる」という内容。嫁(しゅうとめ)ネタや恋愛ネタが盛り上がっているイメージで、自分自身もそういったものをメインに楽しんでいた発言小町。こんな尻の青い大学生の泣き言を投稿しても冷たくあしらわれて終わるのでは、ひとつもレスなんてないんじゃないかと悲観しながらのトピ立てでした。しかしちゃんとつきました、コメント。ストレートにやさしい言葉で素直に励ましてくれる人から、自分の華々しい体験を語りつつも最終的には励ましてくれているようにも見えなくはない人まで。私のために誰かが考えてくれた言葉がそこにあり、そのこと自体に勇気づけられたのを覚えています。

    人間の文体は隠せない!という体験

    写真はイメージです
    その後、「別れた彼氏が、私の置いていた荷物を返してくれない」という、進学ネタ以上にただ泣き言を言いたいだけのトピを立てた際、大してアクセスもレスもないのに、「これってひらりさだよね?」とTwitter上の友人に言い当てられるという出来事が。みんなそんなに発言小町見てるんか……っていうか人間の文体ってこんなに隠せないものなのか……っとびびり倒してトピ立てを封印し、さすがに訪問もまばらに。発言小町は私にとって、「年1回、里帰りのついでにおまいりする地元の神社」くらいの位置づけになっていました。

    というわけで久しぶりにお参りした「境内」。「夫に位置情報共有アプリを入れてほしい」「『ワクチン打ちましたか?』と聞いてくるお店」など時代を反映したトピも散見されますが、やはりベースとなる欲望や不安のレパートリーは、令和になっても変わらないものだなと感じます。その代表格と感じたのが、今回取り上げる「友人たちに勝ったはずなのに」です。

    「閲覧ありがとうございます。アラサー女です」から始まるたいへん礼儀正しく読みやすい文章でつづられるのは、ざっくり要約すると「吹奏楽部の仲間たちに劣る自分のスペックを、大手企業への就職・整形によりどうにか繕い、ついに婚約と相手の海外駐在が決定。やっと同程度になれたと思い報告しに行き、嫉妬めいた言葉ももらったのに、なんだか思っていたほど(うれ)しくない」という内容。

    >全員楽器も上手(うま)く1年生からレギュラー入り、美人な上に頭も良いという、まさに才色兼備な3人です。

    対して私はブスで頭も悪く、部活は最終学年でようやくレギュラー入りしました。
    …(中略)

    そう言われて「私の努力は間違ってなかったのだ」と思う反面、あれだけ望んだ3人と同じレベルになれたはずなのに全く嬉しくないと感じています。

    海外に移住すればそんなことを考える暇もなくなるのかもしれませんが、どうしても燃え尽き症候群のようになってしまい何のやる気も起きません。

    この気持ちはどうすればいいのでしょうか。

    一読して、私は単純にすごいと思ってしまいました。こんなにストレートに、自分の欲望とその消化不良ぶりを言語化できるなんて。ギラギラしてやがる。それに、本当に努力しているなと思います。職業や見た目、夫のステータスといった、一般的な“羨望ポイント”を押さえるだけでなく、ちゃんと吹奏楽を続けて、団体に所属しているなんて。書き方しだいでは傲慢(ごうまん)に過ぎてしまう、いや正直すでに十分傲慢さはあるトピなのですが、なんだか完全には憎めない。

    折り目正しく、淡々と自分を語るすごさ

    写真はイメージです
    トピ主の努力の折り目正しさにあてられてか、どのレスポンスも、そこまでの切れ味は持っていないように感じます。「勝ってないよ」「戦ってないよ」「あなたの独り相撲」といったツッコミが無数に行われていますが、クリティカルに入りきっていない。「整形なんて、子供が生まれた時のことを考えているのか」や「海外勤務なんて羨ましくない。国によっては大変」のように、トピ主が“羨望ポイント”として挙げていた項目を否定しようとする参戦者もいますが、これも肩透かし。トピ主は二つのコメントでこれらを完封します。一つ目では「妄想で回答されている方への補足説明」と称して、整形費用は自分で賄ったことや、友人たちに勝つためではなく恋愛結婚の結果として海外帯同がついてきたことなどを強調。そして二つ目で「会ったこともない人間の人間性まで見ることができる皆様はとても素晴らしいですね。人を見る方法を教えてもらいたいくらいです。」とバッサリ。言葉少なく淡々とした様子に「トピ主、心強いな〜!」「もう『勝ってる』ってことでいいじゃん!」と、だんだん、トピ主とレス投稿者のやりとりまで「勝負」のように鑑賞している自分に気づきました。

    うーん、でも難しいですね。「勝つ」ってなんなんだ? 「嬉しいけど物足りない」ではなく「全く嬉しくない」と言い切るトピ主。何度か読むうちに、彼女が投稿のなかで一度も「幸せ」という言葉を使っていないことにも気づきました。「他人基準をやめたほうがいい」という無数の親身なレスがついてなお、「勝負」という前提を覆す気がない、価値判断を変える予定がないことを、二つきりのコメントからあらわにしている彼女は、この後いったいどうなるのでしょうか。海外滞在という非常に大きなイベントを控えているようですので、そこで何かしら、彼女の望む変化があるといいのですが……。

    人生の一瞬をきりとったトピという断片だけでは、残念ながら、トピ主のすべてを知ることはできません。このトピの場合、本人がその後を報告することもないでしょう。しかしそれでも、この文章を発言小町という境内に書き残したときの彼女の心境には、なんらかの「祈り」が含まれていたのではないでしょうか。その「祈り」に、なんらかの成就がもたらされますように。トピを探訪する私には、ささやかな願いを込めてブラウザを閉じることしかできません。そうして、自分の欲望や不安に響く次の「祈り」を探しに行くのです。

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