「左利きは10人に1人」と言われています。60歳以上の世代では、鉛筆や箸などの持ち方を矯正された経験がある人が多いですが、最近は生まれつきの個性と考え、あえて矯正しない家庭が増えている様子。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、「左利きで何が悪いの?」と題する投稿が寄せられています。意外と知られていない「左利き」の世界。左利きの人は、どんなところに不便を感じているのでしょうか。生の声をピックアップしてみました。
「あの子、左利きだ!」で嫌な気持ちに…
画像はイメージですトピ主「tomcat」さんは50代の女性。子どものころに祖父母と一緒に暮らしていたこともあって、鉛筆だけは右手で書くように直されたそうです。今では鉛筆は右手と左手の両手使いで、箸やハサミなどの刃物は左手。ご自分のお子さんのうち、次女と三女の2人も左利きですが、「私としては気にしないし、直す行為もしていません」と言います。
ただ、昔、飲食店でうどんを食べていたときに、孫を連れた年配の女性客から「あの子、左利きだ!」と指差されたことがあったそうで、それを思い出すたびに嫌な気持ちになるそうです。「みなさんは、『左利きで悪いの?』と思ったり、左利きのことを怒られたりしたこと、ありますか?」と発言小町で問いかけました。
この投稿に100件超の反響(レス)がありました。
ほとんどの人が、「左利きであることを気にしたことはない」という意見です。
カウンター席で、ひじがぶつかることも
「私も息子も左利きです。うちも矯正はしませんでした。基本、困らないけど外食のお店に置いてあるスープレードル(=お玉)と駅の自動改札機はちょっと面倒に感じます。でも、そのくらいかな」(「時代は変わったのよ」さん)
カウンター席のイメージ
「主人が左利きですが、特に気になりません。一緒にいる時に気にするのは、ラーメン屋のカウンターに座るときかな? 主人の左に他人が座って腕がぶつからないように、左端に座るか、私が左側に座るかどちらかです」(「よめやん」さん)
「私も左利きだけど、ハサミもお箸も全く苦労なく左です。一回入院して知らない間に(利き手である)左腕に点滴が刺さっていて、やり直してもらったくらいかな? 困ったことって」(「なんだ迷惑って」さん)。
駅の自動改札機のイメージ
とはいえ、周囲の言動にイラッとしたり苦労させられたりしたケースも。
「私の妹は学校の先生が左利きにキツく、親が頼んでないのに勝手に矯正に力を入れていろいろと大変だったそうで、40代の今でもその先生を恨んでます」(「匿名」さん)
「義実家で台所を手伝っている時、包丁を持つ私に姑が『なんか左利きって怖いわね』と言いました」(「サボテン」さん)
「昔バイトをしていた時に『あ、ぎっちょか』とおばさんにつぶやかれたことがありますよ。右利きの人と置く場所が違っていたからです。失礼ですよねー」(「っちょ」さん)
トピ主さんの指を差されたという経験については「失礼なことをする、残念な人なんだと思うしかないのでは?」(「とくめい」さん)など、同情する声も多数寄せられました。
矯正したら、息子は左右失認に
わが子が左利きとわかったときに、「夫婦で意見が違った」と書いてきたのは「かよ」さん。息子さんの左利きについて、夫が躍起になって直そうとして夫婦ゲンカになったそうです。
「息子はわりと器用で、箸や鉛筆は右も使えるようになりました。大好きな絵は、思う存分、左で。学校で尊敬されているようです。ただ……息子は左右失認(右と左がわからない)になってしまい、左利きを矯正した子がなりやすいと聞き、かわいそうなことをしたと思っています。学校では、そのことを伝えて、体育で配慮してもらっています。周りを見て動くのでワンテンポ遅れるかもしれません、と」とコメントします。
左利きと右利きの相互理解を目指している団体「日本左利き協会」では、2019年6月から20年1月まで1225人を対象に「利き手アンケート」を実施しました。「幼少時に矯正を受けた経験がある」と答えた比率は、1965年生まれ以上の世代では約8割。1966年~85年生まれでは約7割。これに対し、1986年~95年生まれでは52%、1996年~2005年生まれでは36%と若い世代ほど矯正しなくなっている様子がうかがえます。
同協会の発起人、大路直哉さんは「世代によって、考え方は変わってきましたね。今の10代や20代の若者にとって『矯正』は不思議な出来事という感覚が主流とも言えます。海外の研究でも、幼児期に利き手を多く使う方が、言語発達、手先の器用さ、空間把握能力の発達に良い、と言われていますから、昔のように『親のしつけ』として無理に右手で道具を使わせる必要もないのでしょう。ただ、いまだに駅の自動改札機やパソコンのエンターキーやテンキーなど、右利きの人用に作られているものは多いのが実態です」と話します。
ハサミ、缶切り、ナイフなど左利き用も続々

左利き用の道具は増えています。ハサミや缶切り、ナイフ、急須など、左利きの人に使いやすい道具も、通販サイトなどでは登場しています。大路さんのオススメは、左右どちらの手でも使えるタイプの製品。「例えば、左端だけでなく右端からも『0』の目盛りが付いている直線定規。線を左から右に引くか、右から左に引くか、利き手の違いを実感することができます。そうした道具を公共の場などで共有することで、自分の利き手って何だろうと考えてもらうきっかけになればうれしいです」と話します。
最近、大路さんが注目しているのは、教材の分野。右利きの親が良かれと思って、左利きの子どもの背後から手の使い方を教えようとすると、つい大人の都合を優先して右利きの手順で教え込んでしまいがち。むしろ向かい合わせになって、その子の利き手に合わせて、辛抱強く教える工夫が大切と考えられます。右利きの親にも参考になるような、教材の開発が急がれるそうです。
例えば、武庫川女子大学が公開している
家庭科の手縫いの教材。右利き用の画面・左利きの画面を簡単に切り替えられるようにしています。マチ針を打つ順番から縫い進め方まで、ていねいに解説しているので、大変わかりやすいそうです。日本左利き協会では、こうした試みについてホームページで次々紹介していく予定です。
「左利きはたしかに少数派ではありますが、ケガや病気で一つの手が使えなくなることもあります。私は左利きでも右利きでも、両方がストレスなく、使える道具や教材が増えて、こんなところに不自由さがあったのか、とお互いの思いを共有できるようになるといいなあと思います」と大路さんは強調します。
自分の利き手、意識せずに使っていましたが、もし逆側だったらどうだろうかと一度立ち止まって考えてみるのも、時には大切なようです。
(読売新聞メディア局 永原香代子)
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