給湯室の冷蔵庫を覗くと今日もありました。バナナが一本。
バナナの皮には黒マジックで所有者のイニシャルが書き込まれています。
おお、A先輩のバナナだ! もう来てる。今日は早いな。などとひとり頷く私。
毎朝A先輩は家からバナナを一本持参します。会社に到着すると、まずバナナを冷蔵庫に仕舞います。そして昼休みに、そのバナナをむんずと握り、モグモグと満足そうに食べるのです。
A先輩に、バナナ好きなんですか? などと野暮なことを尋ねる者はひとりもいません。
チンパンジーに、バナナ好き? なんて、誰も訊かないですものね。それといっしょです。
そんなA先輩のバナナが、先日、冷蔵庫から消えてしまいました。忽然と。
昼です。
首を振りながら給湯室から戻るA先輩。信じられん! なぜだ! という表情。
私もみんなも愕然とします。A先輩の右手にバナナが握られていないから。衝撃の徒手。
今朝、私が冷蔵庫の中を覗いたときにはしっかりと冷えていたのです。
大きな黄色いバナナが。「AA」というイニシャル入りで。
なぜだ… と涙を零しそうなA先輩。
私たちも胸が痛いです。いったい誰が、こんな酷いことを!
で、その日の夕。
役員室のゴミ箱の中から私はバナナの皮を見つけ出してしまいます。
こ、これって、もしや!
どうしたらいいのでしょう。バナナの事実をA先輩に知らせるべきでしょうか。
例えばそのことで、A先輩が役員に掴みかかるなんてことになったら大変です。
かといって、このままでは明日もまた、先輩のバナナが横取りされかねません。
みなさんのお知恵をお借りしたいです。
よろしくお願いします。
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