見知らぬ男の子がふたり、競うように上から駆け降りてきます。
ふたりとも小学生。五、六年生くらいか。
硬い表情。真剣な眼差し。
ふたりで競争、のようなことをしているらしいのですが
身体の動きはぎこちなく降りる姿に勢いもありません。
見るからに危なっかしい感じ。
不意に左側を走る子の足元が弛みます。
私の存在に気づいた様子。その子が叫びます。
おっ! ヤベえ。これナシ。ナシな!
ところが右側の子は聞き入れません。
なわけないっ!
やがて、滑稽なくらい緩慢に私の横を通過する右側の子。
これでも懸命に駆け降りているつもりなのだ。
左の子は競争を諦めたのか、その場に立ち止まり、
というよりじりじりと後退しながらその様子を見守っています。
ダダダッダダッダダダダ。
どうにも気になるので
私も振り返ってその子の背中を追いかけます。
下から昇ってくる人もスマホから目を離し少年を振り返ります。
障害物はなし。あともうちょい。よし、これはいったな。
ん? 私はあの子を応援している?
ダダダッダダッダダダダ。
そして遂にそのときがやってきます。
最後の一段を飛び、宙に浮く少年の身体。不器用な恰好。
タァンッ! 着地。
やったじゃん! 上の子が吼え、
イエィッ! 駆け抜けた子がそれに応えます。
少年は見事に昇りのエスカレーターを逆流して降り切ったのでした。
エスカレーターは遊具ではありません。
大人なら彼らに注意を与えるべきだったのかもしれません。
でもなぜか、私は見入ってしまいました。
私の頭の中を流れるテロップ、良い子は真似をしてはいけません…
この子たちは「いわゆる良い子」ではないのだ。
だから余計に、彼らが魅力的に見えました。
このような一幕です。
みなさんはどう思われますか。
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