駅からけっこう距離のある小さなアパートに引っ越したその初日に、ボンちゃんはいきなり登場しましたね。
ネコが苦手なワタシは、ボンちゃんの人見知りしないそのふるまいにおびえ、そして震えました。
だっていきなり部屋の中に入ってくるんだもん。
「シッ!シッ!」とへっぴり腰で追い払う私を、ボンちゃんは不思議そうに見ていたね。
そして私のおびえっぷりを見て、妻はケタケタ笑ったよね。
やがてボンちゃんが上の階に住む、とても気持ちのいいご夫婦(初日に謝罪がありました)
の飼い猫であることがわかり、近所の子どもたちにも人気者であることを知るわけだけど、
私はそんなボンちゃんが怖くてたまらなかった。あなたはあまりにも人見知りしなさ過ぎの猫。
夜遅く家に帰り、ドアをあけると、ボンちゃんはスルスルと私たちの部屋に入り込み
「ぎゃあ!」と叫ぶ私に構うことなく先にリビングに座り、お帰りとでも言うように「にゃあ」と鳴いたね。
猫に触ることができない私がボンちゃんと仲良くなるのには随分と時間がかかったけど
でも気付くとボンちゃんはあぐらをかいた私の膝の上で昼寝をするようになったね。
すやすや眠るボンちゃんをおそるおそる撫でた日の緊張は今でも忘れられません。
ボンちゃん。私に唯一気を許してくれた猫。
私の部屋で過ごす時間が少しずつ長くなり、いつしか一緒に昼寝までするようになったある日、
ご夫婦が引越しの挨拶に来てくれたよ。
「いつもボンをありがとうございました」と。
ボンちゃん。新しい街でも人気者かい?
この前の日曜の昼下がり、私はボンちゃんのことを思い出し、ボンちゃんのいないリビングで
なぜかひとりボロボロ涙を流してしまったよ。
さようなら、ボンちゃん。そして、本当にありがとう。
ひとりごとを読んでいただきありがとうございました。
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