どうしてあんな子を選ぶの！？
高卒でひとり親なんて絶対に許さない！！
お母さんは高望みなんてしないわよ、普通で良いの、普通の子なら良いのよ！？
あんな子を嫁にもらったら、お母さんは一生、肩身の狭い思いをするのよ！？
息子の前から姿を消しなさい！！
あなたなんて「人」ですらないわよ！！

２時間に渡った彼の母親の悲鳴は、記憶から消したいのに、８年経った今でも頭の隅々に絡みついています。

呆然と「わかる、その気持ち。お母さんにとって大切な息子。悪い虫だと思われることも当然。」なんて、心の半分では物分かりが良かったり。でも、静かに身を引くことはできない我儘な自分も本心。
結局、反対を解けないまま、長い年月を過ごしてしまいました。
彼の気持ちを、完全に私へ向けることができないまま。

母親から逃げるように実家を飛び出してきた彼と、身を潜めながらも明るく楽しい食卓を囲んだ同棲生活を送っている中、彼の転勤が命じられ、別々の地で過ごすことを決めた日。強引にでもついて行けば良かったかもしれません。
少しずつ何かが変わり始めていたのに、根拠のない自信と安心から、胡座をかいていた気がします。

何年にも及ぶ板挟みで疲弊しきった彼から、別れを告げられた半年前。
彼は「先が見えない。」と、泣きながら悲痛の声を上げていました。
もう、彼を苦しめることはやめよう。
目の前が真っ暗になり、泣きながらも笑って笑わせて最後を迎えました。
あの時から、心が晴れた日は一度もありません。

別れて１ヶ月後くらいから、週に一度メールが来たり、電話をしています。年末年始は１０日間、彼に会いに行きました。
未練がましく情けないと自覚していますが、彼に会いたい気持ちが素直な心で、彼もまた、二度目の転勤先となった新しい地を案内すると意気込んでくれた為、これ以上は後悔しないと決心して。
ふたりの関係に進展はありませんが、もともと、喧嘩することがなかった私たち。やはり、喧嘩もせず笑い合えた時間を「ここが私の一番の場所」なんて感じました。本当は私の居場所なんて無いこと、わかっています。
冗談まじりで「愛しているわ、ダーリン！」なんて言ってみたら、「俺も同じ気持ちだ。」と声にした彼。

結ばれない恋は悲しいけれど、私にはここしかありません。
だから、この恋を続けます。

読んでくださった方、ありがとうございます。