私がまだ中学生のころでした。父と母は喧嘩ばかりしていました。
顔を合わせればもう喧嘩。背中を見せて喧嘩。鉛筆が転がっても喧嘩。
喧嘩。喧嘩。喧嘩の末に、背を向けて二人はだんまり。やっと家が静かになったと思ったら、父が「おい!」と。しかし、母の返事はなく、もう一度、「やい!」それにも返事は返ってこない。歯噛みをする父「こんちくしょうめ!」と片膝立てて母の背中を睨みつける。大人しくしていた母も「また喧嘩を売ろうってのかい!」と修羅の形相で振り返り。そもそも喧嘩中だったのに、そのことも忘れて、新たな喧嘩の火蓋が切って落とされる。
喧嘩。喧嘩。喧嘩って何? 喧嘩は音。ただの音。ケンカケンカ…。頭の中でケンカの意味が消えてしまうくらい、二人は喧嘩のしっぱなし。
愛し合って結婚したはずの二人がこんなふうにいがみ合ってばかり。悲しくて、遣りきれなくて。
わかった。家出してやる。私は部屋に籠もり、大きなバッグに荷物をまとめました。家出の準備です。
夜が来て、朝を迎え、しかし、すごすごと家出の準備を解く私。
このような父母でしたが、二人は添い遂げ、ついこの間、べらんめえと父が他界。
よく喧嘩したよね、と当時のことを母に話すと、母はこくりと頷いて、こんなことを呟きます。
死にたいと思ったことは何度もある、でも、死ねと思ったことは一度もない、なのに、死んじゃった…
そんな二人に思うことは、夫婦って親子よりも濃いぞと。
トピ内ID:3334493733