「母の日にあげるものを考えた。台所にあまり花がないのでリボンフラワーを作ることにした。リボンフラワーだけ買ってきて、一生けんめい作った。下のかごはうちにあるものにした。あんがいうまくできた」
日記帳に書かれたものを、そっくりそのまま写しました。
当時、町の手芸屋さんには色々な手芸キットが販売されていました。
スイートピーやリンドウなど異なった花のリボンフラワー、綿を入れて作るぬいぐるみ、マスコット人形など、貯めたお小遣いで買える値段でした。
手芸屋さんまで自転車で行きます。
まずは町はずれにあるお寺を目指します。そのお寺横の急坂を上りきったら、次は二つ目のお寺に向かいます。境内に焼きそばの屋台があるので、いい匂いが流れてきます。そこを通り抜け信号を渡ると、古い映画館があります。見てはいけない(と言われていた)ポスターが飾られているので、前だけ見て素早く通り越します。そして商店街の一番奥まで一直線にひた走ると、お店につきます。
夢中になっていた手芸。
手芸屋さんまでのワクワク感はよく覚えているのに、あの日のことは全く覚えていません。
でも日記の続き、案外うまくいったリボンフラワーの続きは、今、できます。
「母は『まあ素敵』と、すごく喜んでテーブルの真ん中に飾ってくれた。弟は『本物みたいだあ』と目を丸くした。仕事から帰ってきた父は『おお、上手だなあ』って褒めてくれた」
あの日のその後はこんな感じがいいです。愛があふれる家庭です。
子供の頃、日記を書いていてよかったです。覚えていなくても、思い浮かべることができます。イチゴが並んだ赤い布張りの日記帳です。
母は亡くなりました。
花が好きだった母を想い、
私は母の日に特別の花を飾ります。
父も亡くなりました。
母に花を欠かさなかった父を想い、
私は父の日も特別な花を飾ります。
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