十数年前の、真夏の夜の出来事です。
祖父の家の縁側に座って、大好きな親戚のお兄さんと、二人でいろいろな話をしていたのです。
スイカの話。ラジオ体操の話。学校のプールの話…。
夜空を、ひとかたまりの雲がゆっくりと流れて行き、月を隠し、星々を蔽い、
そして、雲が抜けて夜空は再び月明りを取り戻すみたいに、
お兄さんの肩に、私の肩が触れて、離れて。
触れては離れ…
どれくらいの間、二人でそうしていたのか。
やがて、お兄さんが、夜空の満月を指差しながら、私にこんなことを打ち明けてくれたのでした。
「 この前オレなあ、耳の医者行ってなあ、あんくらいの耳垢出てなあ、マジびっくりしたわ 」
その日以来、夜空を見上げ、そこに満月がぽっかりと浮かんでいれば、親戚のお兄さんと過ごした、あの夜のことを思い出してしまいます。
恋人とドライブをしているときも、車の中から、私は「 ほらあそこ、満月が…」などと呟きながら、親戚のお兄さんの特大の耳垢を心に描いてしまいます。
ああ、切ない…。懐かしくて、思い出すたび涙が零れてしまいそうな、夏の夜のお話でした。
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