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「介護は実子」で押し付け合い? 親の介護問題で夫婦やきょうだいに亀裂も


親の介護が必要になったとき、だれが面倒を見ることにしていますか。ひと昔前なら「嫁がしゅうとを介護するのが当然」とする向きもありましたが、最近では「介護は実子」と、夫婦それぞれが自分の親の面倒を見るケースが増えているようです。でも、「介護は実子」を実行に移したことで、夫婦の間に想定もしなかった亀裂が生まれてしまうことも。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんに、親の介護問題について聞きました。

一家の大黒柱の夫が介護離職

読売新聞の掲示板サイト「発言小町」に、「介護は実子と言われて仕事を辞めたのに、何でだめなのか」というタイトルの投稿が寄せられました。投稿者の「ゆう」さんは40代の男性で、母親が病に倒れて「要介護3」の状態に。そのため、週2回パートで働く妻と介護について何度も話し合いましたが、妻は「介護は実子! 嫁は関係ないんだから自分でどうにかして」という主張を曲げず、結局、正社員として働き、高収入を得ていた「ゆう」さんが職をなげうって、親の介護に当たることになったのです。

ところが、「ゆう」さんが退職して実家通いを始めた途端、妻は泣いたり叫んだりして再就職を迫り、夫婦ゲンカが絶えなくなったそうです。「(給与の一部を)投資に回していたので、不労所得が年間600万円ほど。地方在住で持ち家。ローンもないため、ぜいたくをしなければ暮らしていけます。妻にとって何が不満なのかわかりません。『介護は実子だ』という考えの皆様、最低限の暮らしは保証されているのに、夫が仕事をやめて介護をすることがだめな理由はなんでしょうか?」と問いかけました。

この投稿には、約230件のレス(反響)があり、エールマークも5000回以上押されています。

「奥さんはまさか本当にトピ主さんが仕事をやめるとは思ってなかったのでしょうね。夫の決心を甘く見ていたのでしょう」(「典型的なダブスタ」さん)

「これがまさに女性の言う『介護は実子』の実態です。夫に養われ、専業主婦や週2程度のパート主婦で時間があるのに、自分の親の介護だけはする。でも夫親の介護はやりたくない。手を出したくない」(「ミシェル」さん)といったコメントが寄せられました。

「介護は実子」という言葉は、ほかの投稿でも使われています。

「うちの親はこう言っているのに…」

写真はイメージです
「介護について」と題する投稿を寄せたのは、専業主婦の「トピ主」さん。徒歩5分の距離に住む夫の母親が、3年前に介護が必要になりましたが、「『介護は実子』を貫くべき」という考えの「トピ主」さんは、義母の介護を手伝わず、介護費用についても、「自分たちの家計から補てんするのはおかしい」と認めませんでした。

というのも、裕福な家に育った「トピ主」さんは、自分の親から「子どもに介護の負担はかけない。必要になったら完全看護の老人ホームに行くから」と聞いていたので、夫の親の介護についても「自己責任でしょう」と思っていたのです。

ところがその後、コロナ禍で家業が倒産。ほとんどの資産を失った上に、父親が介護の必要な状態になってしまいました。夫に相談しましたが、「夫は以前のことを根に持っていて、『お金は一切使わせないし、家事も絶対手を抜くな。実家に帰ったら家事をしなくなるので認めない』と、何もさせてくれません。パートして親に仕送りをしようとしても、夫は『それは家族のお金だから自分と同じく家計にいれろ』と。まさかこうなるとは思いませんでした」と嘆いています。

「親も実家もなかったはずなのに」というタイトルで投稿してきたのは、「介護は実子」を主張する兄嫁を持った「おにゃん」さん。両親が二世帯住宅で兄夫婦と一緒に住み始めたとき、「これからは親も実家もないものと思って」と言われ、出産のときにも手伝ってもらえなかったといいます。しかし、親が老いて身の回りの世話が必要になった今、長女である「おにゃん」さんばかりが駆り出されるそうです。

イメージです
「子どもたちが手を離れ、正社員に復帰した私に母が頼ってきます。祖母の介護、母の通院、父の入院。手続きも身体介護も買い物も全部私。あれだけ近づいてはいけなかった実家に頻繁に呼ばれます。(母は)兄や弟には『有休をとってもらうのは悪いから』『男と女では仕事の重みが違う』と。専業主婦である兄嫁さんも『介護は実子』と一切手を出しません。食費以外全ての生活費を両親が負担している兄家族と、ガソリン代も介護費用ももらえない私。親も実家もなかったはずなのに……。私が断れば実家は立ち行かない状況です」と、「おにゃん」さんは苦しい胸の内を明かしています。

「介護は実子」は、一見、理にかなっているようでいて、場合によっては夫婦の間に亀裂を生んだり、きょうだい間の押し付け合いになってしまったりすることもあるようです。

「嫁の務め」→「介護は実子」は時代の流れ

介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは、「ひと昔前は、親の介護は『長男の嫁の務め』と考える人も少なくありませんでした。でも今は、男女を問わず仕事を持つようになりましたし、きょうだいの数も減りました。高齢化が進んで、夫と妻の双方の親が同時期に倒れてしまうケースも少なくありません。そんな中で、“自分の親は自分が介護”という考え方が主流になってきました」と話します。

太田さんは「別居している義理の親子は“愛想笑いの関係”」だと言います。年に1、2回しか会わず、ケンカもしない関係。でも、親が倒れたり、自立的な生活が難しくなったりすれば、介護は「待ったなし」で始まります。

「ホームヘルパーやデイサービスなど、何らかの形で介護サービスを取り入れようとしても、親世代には、サービスそのものへの抵抗感があります。介護が必要になったことを自分で認めたくない気持ちがあるんでしょうね。また、サービスを受けるには、お金がかかります。原則、親本人のお金を使うのが良いと思いますが、それには、親の経済事情を聞き出す必要があります。そのうえで、どれくらいサービスを利用できるか考えるのです。私は、介護の“マネジメント”と呼んでいます。これは、歴史の乏しい、愛想笑いの関係の義理の親子では難しいんです」と太田さんは強調します。

太田さんは、遠距離介護についての情報交換の場である「NPO法人パオッコ」の理事長をしています。実際、会の参加者の中には、親の介護に当たって、離職を考えざるを得ないほど追い詰められてしまうケースもありますが、「介護離職は、退職金や年金も含め、子の生涯の収入の大幅減につながります。いま子世代の方は親よりも長く生きなければならず、いずれは自分だって介護が必要になるかもしれません。自分自身の体力や経済力を温存するためにも、なるべく選択肢に入れないでほしい」と太田さん。

「『介護は実子』じゃないと難しい面が多いのは事実です。けれども、人それぞれ得意な面で助け合えばよいのではないでしょうか。配偶者から、親の介護を押し付けられるのは拒否するけれど、『手伝ってほしい』と言われたら、できる範囲で協力すると言う方は多いです。実際、『こういうサービスを入れると、お義母さん助かると思うよ』と夫に提案し、夫から母親に話すなど、義理親の遠距離介護をサポートしている人もいます。介護は突然始まります。始まるとあれこれ考えているゆとりはないので、自分たちはどのように親の介護を行うのか、日ごろから、夫婦でよく話し合っておくことが大切だと思います」

それぞれの親の介護について、夫は妻の、妻は夫の立場になって思いやる。簡単なようで、いざとなると難しいことかもしれませんが、それが、家族の穏やかな暮らしを守るための第一歩なのかもしれません。(読売新聞メディア局 永原香代子)

【紹介したトピ】

【プロフィル】
太田差惠子(おおた・さえこ)
介護・暮らしジャーナリスト。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」などの視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する一方で、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年にNPO法人化した。現在、理事長。著書に「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと第3版」(翔泳社)など。 

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