そのとき家の呼鈴はピ~ンポ~ンとは鳴らず、ぶっきらぼうに、ピポッ と鳴ります。燃えるような赤い髪を逆立てて息子のガールフレンドがわが家にやって来たのでした。彼女の目のふちはコウモリの羽根をくっ付けたみたいに真っ黒。無愛想に脹らんだ唇は赤紫色です。
玄関に迎えに出た私を彼女は黒目だけで見下ろし、ちょっと拗ねたように頭を下げると、履いていたブーツを脱ぎ捨て、私の横をツンとすり抜け勝手知ったる様子で息子の部屋の方へと歩いて行きます。恐ろしく短いスカートから露出した長い脚は見ている私の目が痛むくらい真っ白です。
ああ、どうしましょう…、彼女の背中を呆然と見送りながら私は手を合わせます。
「今日、友だち来るから。女だから。構わないで」息子は私にそう言いました。
なんかいつもとは違う言葉の使い方でした。他人だがついでだから言ってやった、みたいな物言い。捨て鉢な感じ。
息子は高校生ですが、ふだんはもっと幼い感じなのです。いかにも私を必要としている、といった感じの子だったのです。
私が彼女とお会いするのはこの日がはじめてでした。
ふたりにお茶をお出しすることもなく、彼女と話をすることもなく、私は部屋に籠もっておりました。息を詰めておりました。
なんて無力な母親なのでしょう。
人の見てくれをどうこう言いたくはありません。でも、彼女はふつうではないです。
この先、もしあのとき! と後悔することがあるとすれば、「岐路」はここなのでしょうか。
では私は何をすればよいのでしょうか。
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